冠婚葬祭
仏前結婚式/仏教の結婚式(ぶつぜんけっこんしき/ぶっきょうのけっこんしき)
出典:IBC冠婚葬祭辞典
仏前結婚式とは、仏様の前で執り行う結婚式で、明治時代以降に式次第が制定されるようなった比較的歴史の浅い挙式スタイルです。「因縁」(注1)という仏教の教えに基づき、仏様とご先祖様に対して、現世だけでなく「来世までの2人の結びつき」を誓います。
由来・起源・制定
明治時代に入るまで、浄土真宗以外の仏教教団では出家者の妻帯を認めていませんでしたが、明治時代以降は僧侶の妻帯も認められるようになりました。それにともなって、僧侶の結婚式を仏前で行う形式が検討され、一般の人にも適応されるようになったと考えられます。深い因縁で結ばれたことを仏様やご先祖様に感謝し、結婚生活を通じて、信仰を深めていくようにという構成で行われることが多いようです。
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宗派によって異なりますが、仏前式は「仏様とご先祖様に感謝を捧げ、来世までの結びつきを誓う」という仏教の教えに沿って行われます。
仏前式は自宅で行うこともできますが、一般的には寺院で執り行われます。新郎新婦どちらかの宗派のお寺、または家族・親族に縁のあるお寺を選びます。
【仏前式の代表的な流れ】
1. 入堂
先に親族と参列者が本堂に入堂し、着席します。続いて媒酌人(ばいしゃくにん)が入堂し、最後に式を執り行う式師(僧侶)が入堂して焼香をします。式師は結婚式の進行役です。ここで一同は合掌します。媒酌人とは「結婚式で2人の結婚を取りもつ人」で、式当日に立ち会い、結婚を誓う2人の証人になります。2人を結ぶ縁談から関わる仲人(なこうど)に対し、媒酌人は式の当日だけ参加するのが特徴です。
2. 敬白文朗読(けいびゃくもんろうどく)
式師が仏前に向かい、これから結婚式を行うことを報告します。
3. 念珠授与(ねんじゅじゅよ)
念珠とは「数珠」のことです。司婚者から、新郎が白い房の念珠を、新婦が赤い房の念珠を授かります。両者ともに両手で受け取り、左手の四指にかけて結婚式の終わりまで持ちます。仏前式で最も大切な儀式です。
4. 指輪の交換
指輪の交換を行う場合は、ここで行います。司婚者から指輪を受け取り、お互いの薬指にはめます。
5. 司婚の儀(しこんのぎ)
司婚者が新郎新婦に結婚の誓いを問い、新郎新婦は誓いを述べます。誓いの言葉である「誓詞(せいし)」を読み上げ、結婚の成立となります。
6. 焼香(しょうこう)
左手に念珠を下げ、新郎新婦の順に焼香し、合掌礼拝をします。
7. 誓杯(せいはい)
これは、神前式の三献の儀(三三九度)に当たるもので、「式杯」とも呼ばれます。神前式とは順番が逆で、新婦・新郎・新婦の順で行われます。
8. 親族固めの杯
参列者一同で祝杯をあげます。
9. 法話
司婚者がお祝いの言葉と、仏教の教を伝えるありがたいお話「法話」を説いてくれます。
10. 退堂
宗派によりますが、まず新郎新婦から本堂から退いていきます。
服装やマナーなど
仏前式の場合、参列者は必ず数珠を持参します。
新婦は原則として「和装」で、白無垢(注5)、色打ち掛け(注6)、本振袖(注7)などを着用しますが、黒引き振袖(注8)+角隠し(注9)を選ぶ新婦もいます。 新郎は黒五つ紋付き羽織袴(注10)(正礼装)を着用します。基本的には、式に続いて開かれる披露宴も同じ服装です。
【男性出席者の服装】
フォーマルな服装で出席するのが基本です。昼間(日中)の式であれば「モーニング」、夜であれば「燕尾服(えんびふく)」または「タキシード」が正礼装で、主には新郎新婦の父親が着用します。
準礼装と言われるのは、昼間の式であれば「ディレクターズスーツ」、夜であれば「ファンシータキシード」です。ディレクターズスーツとは、ブラックのジャケット、ブラックとグレーのストライプのスラックス(コールパンツ)組み合わせのスーツのことです。ファンシータキシードとは黒や濃紺、白以外のタキシードの総称で、カラフルな色や柄のジャケットに黒のスラックスを合わせるものです。
略礼装と言われるのは、昼夜に関係なく、黒またはダークカラーのスーツです。
親戚・親族、職場の上司、同僚、部下後輩、友人・知人などは、準礼装、略礼装を着用することが多いです。
その他、シャツ、ネクタイ、ポケットチーフは、白が基本です。靴、靴下は黒で、靴下はくるぶしが見えないものを着用します。
【女性出席者の服装】
男性と同じように、フォーマルな服装を選びます。留袖(注11)やアフタヌーンドレス(昼)、イブニングドレス(夜)が正装に当たりますが、一般的には新郎新婦の母親が着ることが多いです。
その他の親族や同僚・友人の女性は、洋装であれば肌の露出は控えた、膝が隠れる丈のフォーマルなドレス、ノースリーブドレスの場合はボレロ(注12)やショール(注13)を羽織るようにします。また着物もフォーマルと位置づけられるので、訪問着(注14)や付下げ(注15)、未婚であれば振袖(注16)も結婚式にふさわしいとされます。
脚注
(注1)因縁:仏教用語。すべての物事はそれが生じる直接の原因である「因」と、それを助ける間接の条件である「縁」によって起こるとすること。
(注2)古事記:古事記:太安万侶が編纂し、元明天皇に献上された日本最古とされる歴史書。
(注3)日本書記:日本書記:奈良時代に成立した日本の歴史書。
(注4)媒酌人: 結婚式で二人の結婚を取りもつ人」。式当日に立ち会い、結婚を誓う二人の証人となります。(注5)白無垢:表裏白一色で仕立てた和服。
(注6)色打ち掛け:結婚式に花嫁が着る和装の1つで、羽織のように打ち掛けて着るもの。白一色の「白無垢」に対し、色柄、刺繍などが施された華やかな衣装。
(注7)本振袖:振袖の着物の1種。振袖には袖丈の長さが異なる本振袖・中振袖・小振袖の3種類があり、本振袖は明治より花嫁衣装とされる。
(注8)黒引き振袖:黒を基調にした婚礼衣装の1つ。通常の振袖の着付にある「おはしょり」部分を取らず、裾を引いた着方をするのが特長で、江戸時代後期から昭和初期に一般的に使われていた花嫁衣装。
(注9)角隠し:婚礼の際、和装の花嫁が「文金高島田」と呼ばれる日本的な高い髷(まげ)を結った髪の上に、頭を覆う形で被る帯状・幅広の布。
(注10)羽織袴:男性の第一礼装または正装とされる和服。
(注11)留袖:既婚女性が着用する最も格の高い和服の礼装。
(注12)ボレロ:前開きで丈が胴より短いジャケット。スペインの闘牛士の衣裳のデザインを、婦人服や子供服に取り入れたもの。
(注13)ショール:装飾や防寒を目的として、肩や上半身に掛けて着用する衣類の一種。
(注14)訪問着:留袖の次に格式の高い女性用の着物。既婚・独身に関係なく、様々な年齢の女性が着用できる。
(注15)付下げ:準礼装着とされる女性用の着物。訪問着に次ぐ格式。
(注16)振袖:身頃と袖との縫いつけ部分を少なくして「振り」を作った袖丈の長い着物。未婚の女性が正装として用いる。
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