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神式葬儀・告別式(しんしきそうぎ・こくべつしき)

出典:IBC冠婚葬祭辞典

神式の葬儀・告別式は、正式には「神葬祭(しんそうさい)」と呼ばれます。 葬儀については、仏教では「故人の冥福を祈って成仏祈願を行う」と考えられているのに対し、神道(注1)では「故人の魂が家の守護神になる」という考え方になります。

日付や時期

神式の葬儀・告別式は、お通夜の翌日に行われます。お通夜や葬儀・告別式はいつまでに行うべきといった決まりはありません。遺族や火葬場および葬儀場の状況を確認して、お通夜の日程調整をする必要があります。
六曜の友引に当たる日は「友を引く=友を一緒にあの世に連れていく」との連想から、葬儀・告別式は友引を避ける場合が多いですが、お通夜は故人を見送る場ではなく、故人の思い出に浸る場という考えから、友引でも行ってよいと考えられています。

【日本の死亡に関する手続き】
まだ医療技術が発達していない時代、死亡診断後に蘇生するケースがあったため、日本には、死亡診断から火葬までに24時間以上あけることを義務付けた法律があります。
「死亡診断書」が発行されて初めて法的に死亡が認められるため、人が亡くなった際には法律上この書面が必ず必要となります。死亡届を書いたら、死亡の事実を知った日を含めて7日以内に、故人の本籍地または死亡地、届出人の現住所地のいずれかの役所に提出します。届け出が受理されると「火葬許可証」が発行され、その許可証をもって火葬が行われます。

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由来・起源・制定

『古事記』(注2)にはアメノワカヒコという神が亡くなった際、飲み食いをしながらアメノワカヒコを弔ったとの記述があり、 古代における葬儀の様子は神葬祭の源流となるものです。
日本の葬儀は急速に仏式のものが普及し、江戸時代になるとキリシタン対策のための寺請制度(てらうけせいど=人々は必ずどこかの寺に所属しなければならないという制度)により、仏式の葬儀が強制されました。しかし江戸時代の中後期になると、国学の興隆によって国学者たちが日本古来の精神・文化に立ち返ろうと訴える中で、神葬祭の研究も行なわれるようになりました。その後、日本古来の信仰に基づいた葬儀を求める運動(神葬祭運動)が起こり、その結果、幕府は1785(天明5)年、吉田家から許可状のある神道者とその嗣子のみに神葬祭を行うことを許可しました。これが現在の神式の通夜、葬儀の儀式の起源とされています。

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行事や風習・慣習、季節に関する事項

神道では人間の死を"穢れ"と考えるため、神社などの神聖な場所では葬儀を行いません。神道の儀式を経て死者は神様となり、御神職や家族よりも上位に位置づけられます。

【神葬祭の流れ】
1日目(お通夜)
1.「帰幽奉告(きゆうほうこく)」
自宅の神棚や祖霊舎(それいしゃ/先祖をまつる祭壇)に、家族が亡くなったことを奉告し、先祖の霊が死者の穢れに触れないよう、神棚と祖霊舎の前面に白紙を貼り付けて封をします。
2.「枕直しの儀」
ご遺体を清め、白小袖を着せて北枕に安置します。小案(小さな台)を2つ設け、一方の案には故人が日頃好んで口にしていた食べ物(常餞/じょうせん)や、米や酒(生餞/せいせん)を置きます。もう一方の案には守り刀の背をご遺体に向ける形で配置します。
3.「納棺の儀」
ご遺体を棺に納め、しめ縄と紙垂(しで)を巡らせて、棺の周りを装飾します。また、納棺前に故人を白小袖などに着替えさせる場合もあります。

2日目(本葬)
1.「葬場祭」
仏葬における葬儀や告別式のように弔辞奉読や祝詞などを行います。仏式では焼香を行うのに対し、神式では玉串を奉げます(玉串奉奠)(注3)。
2.「火葬祭と埋葬祭」
葬場祭を終えた後は、火葬場で火葬祭を行います。埋葬は五十日祭を目安にすることが習わしとされていますので、お墓に納骨する際に埋葬祭が行われます。
3.「帰家祭」
全ての葬儀日程を終えた後、喪家は自宅へ帰って塩と手水で身を清めます。
祓除の儀を済ませた後に葬儀でお世話になった神職や、世話役の労をねぎらって飲食を振る舞う「直会(なおらい)」という宴を行います。
神棚の封は納骨を済ませた後を目安に、没日から50日目に封印を解きます。

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お金に関する事項

神道の場合、仏式の香典に当たるのがお金包の表書きが「玉串料」です。「御榊料」「御霊前」と書きます。比較的近い親戚の場合、玉串料の目安は1万円~2万円とされています。 血縁が近くない親戚や職場関係の人、友人・知人の玉串料は、5,000円~1万円が目安です。目安を考慮したうえで、生前のお付き合いの深さで金額を考えることも多く、付き合いが深ければ金額も多めになります。「不幸ごとを用意していたようで良くない」という理由から、弔事においては新札を使わないことがマナーとされていますが、清潔なものを差し上げる意味できれいなお札を用いましょう。気になるのでしたら、お札を半分に折って広げて使っても良いです。本来はお札ではなくお金包みの折り方が違うのです。

神道のお葬式の費用は、仏式の葬儀とあまり変わらず、80万円~140万円が相場と言われています。 こ金額には葬儀を行うための基本的な費用(会場、祭壇、棺、ドライアイス、搬送料など)、おもてなし費用(料理や返礼品など)、神社への玉串料(御礼)が含まれているのが基本ですが、事前に葬儀社などに確認するほうが良いでしょう。
神社に儀式をお願いする場合、用意する玉串料(御礼)の平均的な金額は約30万円と言われています。

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返礼やお返しについて

日本社会の風習として、神葬祭(通夜祭/葬場祭)でいただいた玉串料・御霊前・御榊料の返礼品を用意するのが通例となっています。神式では仏教で言う忌明けに相当するのは「五十日祭」となり、返礼の時期は五十日祭の日以降となります。いただいた金額の1/3〜半額(半返し)程度の品物に礼状を添えて贈るのが一般的で、お菓子・お茶などの食品や、タオル・石けんなどの消耗品が良く選ばれています。

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のし紙・掛紙の水引や表書について

神式の場合、不祝儀袋は白色のシンプルなものを使用し、水引は黒白または双銀、黄白(西日本)の「結切」を用意するようにします。 市販されている不祝儀袋の中には、蓮の花など仏教にちなんだ絵柄が入っているものもあるので、使用しないよう注意しましょう。 また、表書は薄墨で「御霊前」あるいは「御神前」「玉串料」とするのが一般的です。神道(神式)の葬儀で用意する「玉串料」は、仏教における「香典」や「お布施」と同じ意味です。参列者は遺族に「玉串料」を渡します。水引下段に氏名を記入します。手書で丁寧に書くのが基本です。印字する場合は楷書体や教科書体が一般的です。
返礼品につける掛紙は、黒白または黄白(西日本)の「結切」が一般的で、表書は、薄墨で「偲び草」「志」とし、下段には喪主の氏名を記入します。

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服装やマナーなど

神式の葬儀でお参りする際(玉串奉奠の際)は、まず神職(注4)に一礼し、神前(玉串案前)に一礼、玉串を供えた後で拝礼を行います。拝礼の仕方は、神社に参拝する時と同様「二礼・二拍手・一礼」の通りです。ただし弔事であるため、中間の二拍手は音を鳴らさない「忍び手」で行います。

お通夜や葬儀・告別式に参列する時は、原則として喪服が基本です。男性は、ブラックスーツ(シングル、ダブル両方可)に礼装用の白いワイシャツ、無地の黒ネクタイ、タイピンやポケットチーフは着けません。女性は、黒いワンピースかフォーマルスーツ(原則として長袖)にします。急の案内で喪服が用意できていないときは、スーツや仕事着でも大丈夫だとされています。
靴やカバンも黒色で、光沢のないものを選びます。
女性の靴は、つま先が丸いプレーントゥや少し角ばったスクエアトゥが基本で、ヒールは3~5cm程度で、ハイヒールやブーツなどは避けるようにします。女性が宝石を身に着ける際は「涙」を表す宝石とされ、真珠や黒真珠は問題ないとされています。
神式では、数珠は不要です。

通夜振る舞いの席や葬儀でなどでご遺族に挨拶をする場合、神式では「御霊のご平安をお祈りいたします」と言うのが一般的です。仏式の「ご成仏をお祈りします」の言葉は使わないよう気を付けましょう。「ご愁傷さまでございます」の愁傷は、「うれいいたむ」ことなので使っても問題ありません。「悔やむ」も人の死をいたむことなので使っても良いと言われています。

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脚注

(注1)神道:古代日本に起源を持つとされる宗教。八百万の神、自然崇拝や祖霊(先祖の霊)の観念に基づく信仰。
(注2)古事記:太安万侶が編纂し、715年(和銅5)年に元明天皇に献上された日本最古とされる歴史書。
(注3)玉串奉奠(たまぐしほうてん):神道の儀式で行われる、玉串を祭壇に捧げる儀礼。
(注4)神職:神社に仕える者。神主。

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